大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 平成2年(行コ)148号 判決

控訴人

小平沢保己

右訴訟代理人弁護士

土田庄一

山本高行

安江祐

鈴木剛

井上聡

被控訴人

今市労働基準監督署長 細谷正英

右指定代理人

堀内明

井上邦夫

西沢繁官

沼子典司

斎藤安彦

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

一  当事者の求める裁判

一 控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が控訴人に対して昭和六二年一二月八日付でした労働者災害補償保険法に基づく障害補償給付を支給しない旨の処分を取り消す。

二  被控訴人

主文同旨

第二当事者の主張

当事者双方の主張は、次のとおり訂正するほかは、原判決事実摘示「第二 当事者の主張」欄の記載のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決二枚目裏八行目の「土幌町」(本誌五七三号〈以下同じ〉46頁1段11行目)を「士幌町」に改める。

2  同七枚目表一一行目の「同法」(47頁2段8行目)を「会計法」に改める。

3  同一二枚目裏二行目から三行目の「起因するものであるとを」(48頁3段22行目)を「起因するものであそことを」に改める。

4  同別紙職歴表No1(省略)一行目の「土幌町」を「士幌町」に改める。

第三証拠関係

原審及び当審訴訟記録中の書証目録並びに証人等目録の記載のとおりであるから、これを引用する(略)。

理由

一  当裁判所も、控訴人の請求は理由がなくこれを棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり付加、訂正、削除するほかは、原判決の理由説示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決二〇枚目表六行目の「土幌町」(50頁3段18~19行目)を「士幌町」に改め、同一〇行目の「までの間」(50頁3段26行目)の次に「(なお、原判決添付別紙職歴表記載のほか、昭和四一年ころ、岩手県下閉伊郡田老町所在の田老鉱山でも約三か月間就労した。)」を加え、同裏三行目の「一か月」(50頁4段2行目)を「一か月間に」に、同四行目の「一日」(50頁4段3行目)を「一日に」にそれぞれ改める。

2  同二一枚目表七行目の「平均聴力喪失値」(50頁4段20行目)を「平均聴力損失値」に改める。

3  同二二枚目裏五行目の「乙一五号証」(51頁2段3行目の(証拠略))の次に「当審証人成沢方記の証言により成立が認められる甲二一号証」を加える。

4  同二三枚目表一一行目の「騒音性難聴は」(51頁2段30行目)の次に「一般に」を加え、同裏九行目の「内耳」(51頁3段13行目)を「中耳」に改める。

5  同二四枚目表四行目の「ものであること」(51頁3段22行目)の次に「とされていること」を加える。

6  同二八枚目裏八行目の「四二条」(52頁4段29行目)を削る。

7  同三〇枚目表一行目の「当該傷病」(53頁2段8行目)の前に、「換言すれば権利の発生を基礎付ける事実関係である」を加え、同裏四行目冒頭(53頁2段29行目)から同一〇行目末尾(53頁3段8行目)までを次のとおり改める。

「 しかしながら、医師による専門的、医学的検査と診断を受けてはじめて当該傷病が業務に起因するものであると判明する場合があり得ることは前示のとおりであるが、常に労働者が右検査、診断を受けて当該傷病が業務に起因することを覚知しなければ時効が進行しないと解することは相当ではなく、当該労働者において、諸般の事情から権利の存在(換言すれば権利の発生を基礎付ける事実関係である当該傷病の症状の安定ないし固定及びその業務起因性)を認識しえた場合には、業務に起因する傷病の症状の安定ないし固定の時から(右症状の安定ないし固定した後に右事実関係を認識しうるに至った場合は右認識しうるに至った時から)、時効が進行するものと解すべきである。なお、控訴人は、民法七二四条前段の規定を類推適用し、主観的要件として、権利者が業務起因性を覚知したことが必要であると主張するが、前示のとおり、労災保険給付を受ける権利は、民法上の不法行為に基づく損害賠償請求権とは性質を異にし使用者の帰責事由を問わない公法上の請求権であり、故意又は過失により違法な侵害行為をした不法行為者に対する権利行使の場合(この場合には、「知リタル時ヨリ」消滅時効が進行するが、期間は三年間の短期消滅時効とされている。)と同一に解しなければならない理由はなく、前記のように、当該傷病の症状の安定ないし固定及びその業務起因性を認識しえたのに不注意で覚知しなかった場合でも権利行使が現実に期待のできるものとして時効が進行すると解しても、権利者の保護に欠ける点はないというべきである。

したがって、控訴人の右主張は、採用することができない。」

8  同三三枚目裏四行目の「当該傷病」(54頁1段29~30行目)の前に「換言すれば権利の発生を基礎付ける事実関係である」を加える。

9  同三四枚目裏五行目の「一か月」(54頁3段3行目)を「一か月間に」に、同行の「一日」(54頁3段4行目)を「一日に」に改める。

10  同三五枚目表七行目の「自己の騒音性難聴が」(54頁3段23行目)を「自己の難聴が騒音職場において従事した」に、同裏七行目の「当騒音性難聴」(54頁4段9行目)を「騒音性難聴」にそれぞれ改める。

11  同三六枚目裏一行目の「権利」(55頁1段3行目)の次に「の存在」を加え、同七行目の「同法」(55頁1段14行目)から同九行目の「生ずる」(55頁1段16行目)までを「会計法三一条一項の規定の類推適用により、時効の援用を要せず、絶対的に権利消滅の効果が生ずるものと解すべきである。」に改める。

二  よって、これと同旨の原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 越山安久 裁判官 赤塚信雄 裁判官 桐ケ谷敬三)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例